形容詞の through の意味 副詞や前置詞の時と何がどう違う?
形容詞の through の使い方
超短編小説『終わりね、私たち』
二人の間には、長く重い沈黙が横たわっていた。
タバコをくゆらせながら、窓の外を眺める男。ソファに深く沈み、うつむいたままの女。向かい合わせに座っているのも関わらず、どちらも一言も口をきかず、目を合わせようともしない。
夫婦という名の両者に、もはやかつてのような愛情はなく、冷めて乾いた感情のみが場を支配していることは、誰の目にも明らかだった。
しばらくして、女のほうが口を開いた。
"We're through."「終わりね、私たち」
~ The END ~
――と、through は大体こんな感じで使います。
名詞を修飾しない場合
「~を通って」という前置詞や副詞がよく知られてますが、この場合は形容詞。
特にアメリカ英語で、「縁が切れて」「終わって」「価値がなくなって」の意味です。この意味では、名詞の前に来ません。いわゆる「叙述用法」になります。
仕事などが完了した時、人との関係が終わった時、用途がなくなった時、など。「何が」終わったのか、「何と」縁が切れたのか言う場合は、with で表せます。主語は「人」だけでなく、「物事」でもOK。
ちなみに、through の発音は [θruː]、throw(投げる)の過去形の threw も [θrúː] です。
through と threw は同音異義語
叙述用法の例文をもう少し挙げておきます。
- Are you through with that newspaper?
(その新聞は読み終わった?) - I'm through with women.
(女性とは縁を切った) - Todd and I are through.
(トッドと私は終わった) - Training as a counsellor would guarantee her employment once her schooling was through.
(カウンセラーとして働くことで、学校を卒業した後の彼女の就職が保証されるだろう) - That swimmer is through as an athlete.
(あの水泳選手はアスリートとして終わりだ)
名詞を修飾する場合
さらに、through は、名詞を修飾する「限定用法」の時もあります。
乗り換えなしで移動できる、つまり「直通の」の意味で through train(直通電車)など。
- It's not a through road so it's quite quiet.
(直通道路ではないのでとても静かだ) - The original through road is still in existence at the top and the bottom of the picture.
(写真の上部と下部には元の貫通道路がまだ残っている) - We finished the trip on a through train, drinking white wine and eating crisps.
(私たちは直通列車に乗って白ワインを飲みポテトチップスを食べながら旅を終えた) - The through route sign-posting will shortly be complete.
(直通ルートの標識設置はまもなく完了する)
thorough と同じか異なるか?
形容詞の thorough [θə́ːrou] は、through ととてもよく似た単語です。スペルだけでなく、意味も「完全な」「徹底的な」なのでやや似てますね。
実際、初期近代英語まで、through と thorough は明確に区別されなかったそう。thorough も、名詞を修飾する時としない時があります。
名詞に付かない時は、「注意深く慎重な」です。「徹底した」と訳してもいいような気もするけれど…。
- The police carried out a thorough investigation.
(警察は徹底的な捜査を行った) - You will need a thorough understanding of the subject.
(主題について徹底的に理解する必要がある) - The screening of applicants must be thorough.
(応募者の審査は慎重でなければならない) - She's very thorough and conscientious.
(彼女は非常に慎重で良心的だ)
副詞・前置詞の through
そもそも、through については、副詞と前置詞と形容詞の区別が今ひとつ分かりません。
through が名詞に付く時は、形容詞以外の何物でもないけれど、be動詞の後に来る時は、副詞や前置詞でもいいのでは、と思いませんか?
副詞の場合
副詞は、名詞以外の語句をほぼ何でも修飾します。go through(通り抜ける)、cut through(通過する)など、動詞と一緒になったフレーズは分かりやすいですね。
前置詞と違う点として、動詞とセットの場合もあるものの、基本的に単独で使われ、「through+名詞」の形にはならないことです。必ず訳さなくてはいけない、ということもありません。
- 副詞の through の意味
- 「最初から終わりまで」「端から端まで」
- 「直通して」「直行して」
- 「通り抜けて」「乗り越えて」
- 「完全に」
「最初から終わりまで」
- Put the coffee in the filter and let the water run through.
(フィルターにコーヒーを入れて水を流します) - I expect I'll struggle through until payday.
(給料日まで苦労することになると思う)
「直通して」
- This train goes straight through to York.
(この列車はヨークまで直通する) - "Did you stop in Oxford on the way?" "No, we drove straight through."
(「途中でオックスフォードに立ち寄った?」「いいえ、まっすぐ直行した)
「通り抜けて」
「(成功して)次の段階に進んで」「乗り越えて」「通り抜けて」の意味で、試験や競技などで、成功を収めた時の言い方です。get through (to) と言っても同じ。
be動詞のすぐ後に through が来るため、副詞扱いだったり形容詞扱いになっていたり、ちょっと曖昧です。
副詞か形容詞か…その辺は無理に区別する必要はないでしょう。 結論
- She's through to the next round of interviews.
(彼女は面接の次の段階に進んだ) - If we win this match, we'll be through to the quarter-finals.
(この試合に勝てば準々決勝に進出できる) - They got through to the finals.
(彼らは決勝に進出した)
「完全に」
意味は「完全に」「徹底的に」で、through and through というイディオムを使うこともあります。
- We got wet through.
(ずぶ濡れになった) - My mother is Irish through and through.
(私の母は根っからのアイルランド人だ) - The idea warmed her through and through.
(その考えは彼女を完全に温めた)
前置詞の場合
意味はほとんど副詞と一緒。ただ、「through+名詞」の形になるのが前置詞です。
- 前置詞の through の意味
- 「~の最初から終わりまで」「~の一方の端からもう一方の端まで」
- 「~を通り抜けて」「~を乗り越えて」
- 「~によって」「~のせいで」
- He will not live through the night.
(彼は一晩中は生きないだろう) - The burglar got in through the window.
(泥棒は窓から侵入した) - First I have to get through the exams.
(まず試験に合格しなければならない) - You can only achieve success through hard work.
(成功は努力によってのみ達成できる) - The accident happened through no fault of mine.
(事故は私のせいではない)
まとめ
through はいろいろな意味で使われますが、基本は「通り抜けて」と考えればよいのではないでしょうか。形容詞の「終わって」も、途中のあれやこれやを通り抜けた結果を示してます。
ゆるりと読む洋書
『トム・ソーヤー』や『ハックルベリー・フィン』でおなじみの、マーク・トウェインのペシミスティックな物語です。お世辞にもほっこり気分にはなれないけど、「人間て何だろう」と考えさせられます。
オーストリアの小村に「サタン」という名の美少年が現れ、村の3人の少年は不思議な彼に魅了されていきます。この手の設定が好きな私にはたまらなかった…笑
洋書版はちょっと古めの英語ですが、短編で、それほど難しくはありません。
(引用・参照元: Oxford Learner's Dictionaries, The Free Dictionary, Cambridge Dictionary, Collins Dictionaries, LDOCE, Online Etymology Dictionary)