fan と buff と maniac 「ファン」 と 「マニア」 の境界線はどこ?

「ファン」 と 「マニア」
「ファン」と「マニア」の境界線はどこでしょう? 「マニア」のほうが熱狂的なイメージがありますが、必ずしも「ファン」のほうが落ち着いているわけじゃありません。
ロバート・デ・ニーロが狂信的な野球ファンを演じた1996年の『ザ・ファン』(The Fan)という映画では、『ミザリー』の男性版というか、コワいファンの姿が描かれてます。
昔、『野球狂の詩』というマンガがありました。何かに熱狂的に夢中になっている人のことを、「~狂」と言ったりしますが、今はこの言い方あまり聞かないように思います。
「狂」という漢字のせいでしょうか。もしかして、「ポリティカル・コレクトネス」のため…?
それっぽい英語は、fan、buff、mania など。以下は、英英辞書の定義です。
- fan:
人や何かを、尊敬したり応援したりして楽しむ人 - buff:
特定の何かについて、非常に興味があり、よく知っている人 - maniac:
特定の何かに、非常に強い興味を持っている人
fan とは?
fan は日常で一番一般的に使える言葉ですね。「扇」の意味もあるものの、語源が違います。
fan と fanatic
アメリカ英語で、もともとは「野球愛好家」を指したそう。19世紀頃から使われ、「狂信者」や「熱狂的な」を意味する fanatic の短縮形と推測されています。
fan の用例
- Movie fans will be familiar with his work already.
(映画ファンなら彼の作品をすでによく知っているだろう) - I'm a big fan of her books.
(彼女の本の大ファンだ) - I'm not a great fan of bushy beards.
(ふさふさしたひげがあまり好きではない)
fanatic の用例
政治や宗教の「狂信者」の意味もあり、「何かについて極度の熱意を持っている人」です。やや危険なイメージ…? 形容詞としては、どちらかというと fanatical を「熱狂的な」の意味で使います。
- For fishing fanatics, the rivers estuaries and coast offer endless opportunities.
(釣り愛好家に、川の河口や海岸は無限の機会を提供する) - I am not a religious fanatic but I am a Christian.
(宗教狂信者ではないが、キリスト教徒だ) - Ron's an exercise fanatic.
(ロンは運動に熱狂している)
buff とは?
もともと buff は、buffalo(バッファロー)の皮で作られる柔らかく厚みのあるレザーを示し、「明るい茶色がかった黄色」「淡い黄土色」のこと。
色味の意味では数えられない名詞なので、in buff は「淡い黄土色で」。the が付いた in the buff は「裸の」というイディオム。これは「皮」と「皮膚」の関連から来たとか。
「熱狂者」の意味は口語で、19世紀のニューヨークのボランティア消防隊の制服が黄土色だったことから生まれたようです。
さらに、「コンピュータゲームでキャラクターや武器などのパワーが増加すること」も buff と言いますね。これは、「柔らかい布で磨いて光沢を出す」という意味の動詞の buff から来ています。
スラングの buff up は、「体を鍛えて魅力的に見せる」「磨いて印象的に見せる」。そこから「パワーアップ」に転化したのでしょう。

- They were a group of computer buffs who used to meet every Thursday evening.
(彼らは毎週木曜日の夜に集まっていたコンピュータマニアのグループだった) - Young movie buffs helped pick some of the winners.
(若い映画ファンが受賞者の選出を助けた) - I would like to order 3 ironing board covers, please, in buff or something natural.
(アイロン台カバーを淡い黄土色かナチュラルな色で3枚注文したい) - Some weapons will receive buffs in the next update.
(次のアップデートで、いくつかの武器が強化される)
maniac とは?
日本語では「マニア」というけれど、英語では「人」を表す名詞は maniac [méiniæ̀k] です。発音にご注意を。
形容詞の用法としては、名詞を修飾する使い方のみ。mania だと「何かに対する非常に強い欲求や熱意」になります。
形容詞は16世紀初頭、後期ギリシャ語の maniakos から来ていて、「狂気にとりつかれた」「狂人」の意味で使われていました。語源は、3つの中で一番強烈。

- I love winter food because I am a soup maniac.
(スープマニアなので冬の食べ物が大好きだ) - My brother is a maniac when it comes to football.
(兄はサッカーとなると熱狂的だ) - I won't get in the car with Richard ― he drives like a maniac!
(リチャードと一緒に車には乗らない。彼は狂ったように運転する) - A maniac driver sped 35 miles along the wrong side of a motorway at 110 mph.
(狂気の運転手が高速道路の反対側を時速110マイルで35マイル走行した)
maniac というと、パッと思い浮かぶのが、1983年の映画『フラッシュダンス』(Flashdance)の挿入歌でマイケル・センベロの曲 Maniac です。
Prime Videoで『フラッシュダンス』(字幕版)を見る
She's a maniac, maniac on the floor
「彼女は熱狂的だ。床の上で狂ってる」
セクシーとか思う前に、ダンスの物凄さに圧倒されます。まさに maniac。床は「ゆか」。「とこ」と読んだらマズいです。
まとめ
buff や maniac には昔懐かし「~狂」といったニュアンスがあるけれど、fan にはありませんね。ただ、fanatic のほうは若干アレかもですが…。
ゆるりと英字新聞
英字新聞と言うと、身構えてしまいがちですが、気楽に読めるものもあります。The Japan Times Alpha(ジャパンタイムズアルファ)は、長年のベストセラー。
英語学習者向けに作られているので、読みやすく、初めて英字新聞を読む方にも敷居が低め。リアルタイムのニュースを英語で読むと、「これはこんな英語になるんだ」と新しい発見があって面白いですよ。
Japan Times Alpha(ジャパンタイムズアルファ)
発行日: 週刊(土曜日)
(引用・参照元:Oxford Learner's Dictionaries, The Free Dictionary, Cambridge Dictionary, Online Etymology Dictionary, English Language & Usage Stack Exchange, Collins Dictionaries)